子供みたいに拗ねるひと

やけに大人びた印象を持つが、見た目ほど中身は成長していないらしい。さきほどから眉間に皺を寄せ、なにを言っても黙ったまま壁を睨む剣城にため息をついて、倉間はその背中にへばりついた。脇の下に腕を回して密着する。ぴくり。一瞬だけ反応したが、やはり視線は壁を向いて動かない。さらに腕に力を込める。

「……京介」

耳元に口を寄せ、滅多に呼ばない名前を呼ぶ。肩が大きく跳ねる。身体が強張りかけたところで体重を乗せ、壁にぶつける勢いで押し倒した。

「うわっ」
「お、しゃべった」
「……危ないでしょう」
「だってお前喋んねーんだもん」
「…………」
「いつまで拗ねてんだよ、剣城」

少し身体を離すと、壁に腕をついた剣城が恨みがましくこちらを見る。やっと壁から動いた視線に満足して笑うと余計に眼光は鋭くなった。それすらかわいく思えるあたり、もうどっぷりと浸かってしまっていることを実感する。
ふたたび密着する姿勢になり、肩のあたりにぐりぐりと額を擦り付けた。

「拗ねんなよー構えよー」
「……構ってくれなかったのはそっちでしょう」
「しょうがねえだろ、ボス戦だったんだって」

こめかみにキスをして様子を伺う。視線は逸らされるものの、さきほどまでの鋭さはない。調子に乗って唇に押し付ける。瞳がこちらを向く。ひひ、と笑ってやれば突然がばりと身体を起こして引き剥がされた。油断したところに正面から飛び込んでくる。ぎゅうぎゅう抱きつかれて若干の息苦しさ、が逆に心地よかった。

「悪かったって」
「…………俺は、先輩のなかで何番ですか」
「殿堂入り」

縋り付く頭に優しく触れて、回した腕で背中を叩く。しばらくはこのまま動けないだろう。一つ年下の恋人は、時折それ以上の歳の差を感じるほどに、幼い。